用の美 -暮らしの美しさについて-

“道具は使われてこそ美しい”という考え方が日本にはあり、それを「用の美」と呼びます。
それは大正時代、大量生産が始まった頃に柳宗悦らが始めた民藝運動の中で唱えられました。
この記事では現代における民藝の良さや、民藝運動に携わった人たちについて紹介していきます。

大量生産品にあふれた現代社会

現在は「プチプラ」と呼ばれるような大量に作られることで手に取りやすい値段を実現した商品は若者を中心に幅広い世代で支持されています。しかし、大量生産の背景には環境への負荷などの課題も抱えており、懸念される問題も少なくはありません。

安価で手に取りやすい商品のメリット
・大量に生産することでコストを抑えられるため、価格がお手頃
・大量に在庫があるため、簡単に手に入り流行を抑えることができる
・それなりに品質も担保されており普通に使える

確かに大量生産品であっても品質が高く、性能が優れているものは多くあり、生活するのには困らないのが現状です。特に日常的な用途では特別な性能が求められない場合、大量生産品が非常に適しています。しかし一方で、大量生産品ではどこか物足りない対して不満を持つ人々は、以下の点に焦点を当てています。

・みんなが持っているようなものは持ちたくない。
・一つのものを長く大事に使いたい。
・ものの経年変化(劣化)も楽しみたい。
・環境や自然との共生を大事にしたい。

大量生産品は一般的に同じデザインや特徴を持つため、個性を表現するのに適さないと感じる人々がいます。Z世代や近年の流行としては個人の好みやスタイルに合わせた製品を求める需要が高まっています。また、大量生産品は修理するという考えが薄く、安価に手に入るという背景からすぐに買い換えてしまうといった消費行動に走りやすくなる傾向があります。それらの行動は資源の過剰消費や廃棄物の増加につながり、環境に対する負荷を増加させる傾向があります。近年ではSDGsなど環境に対する配慮が高まっているため、大量生産をよく思わない人も多いようです。

「用の美」 とは?

民芸運動の第一人者、柳宗悦は生活道具として使われていた民藝品に新たに価値を見出し、それらの美しさを用の美と称え、「用と美が結ばれるものが工芸である」と1928年に出版した「工藝の道」という書籍に書き記しています。
日本の美意識を語る上では欠かせない要素でもある「用の美」は物質的な価値観を超えた日本の暮らしのあり方そのものなのかもしれません。
人の手で作られたものだからこその一点一点異なる愛らしさや独特の魅力は国内に限らず、海外からも幅広く支持されているのです。

民藝運動について

時代は大正。大量生産が始まった中、柳宗悦を発端とし、民藝運動が起こった。
鑑賞品としての美しさではなく、生活道具として使われていた民藝品に新しい価値を見出していくという運動でした。
河井寛次郎や富本憲吉、濱田庄司、バーナード・リーチなどさまざまなバックグラウンドを持つ彼らが加わった民芸運動は「日本民藝美術館設立趣意書」を発表したことをきっかけとなり全国へ広がった。

民藝運動に携わった人たち

柳宗悦 -民藝運動の父-

実績

「民藝」という言葉の生みの親。日本民藝館初代館長。

主な著書

『手仕事の日本』
『民藝四十年』

富本憲吉

実績

重要無形文化財「色絵磁器」の保持者として人間国宝に認定

主な著書

『窯辺雑記』1925年
『楽焼工程』1930年
『製陶余録』1940年
『陶器 随筆集』1948年

河井寛次郎

実績

柳・濱田らとともに日本民芸美術館設立趣意書を発表。
古い日用品を発掘し、その制作技術を復活させ、無名職人による「用の美」を世に広め、新しい日用品を制作し普及させようとした「民藝運動」に深く関わる。

主な著書

『六十年前の今』1964年
『近代浪漫派文庫28 河井寛次郎/棟方志功』2004年
『いのちの窓』 1975年
『炉辺歓話』1978年
『陶技始末』1981年
『手で考え足で思う』1981年
『火の誓い』1996年
『蝶が飛ぶ葉っぱが飛ぶ』2006

濱田庄司

実績

日本の陶芸家であり、民藝運動の中心的な活動家の一人。
第1回重要無形文化財(工芸技術部門陶芸民芸陶器)の人間国宝に認定。
1964年に紫綬褒章、1968年には文化功労者・文化勲章を受章。

主な著書

『世界の民芸』1972年
『無尽蔵』1974年
『窯にまかせて』1976年

バーナードリーチ

実績

主な著書:イギリス人陶芸家。白樺派や民藝運動にも関わりが深く、日本民藝館の設立にあたって柳宗悦に協力した。

民芸品の魅力って?

民芸品は一つひとつ手仕事によって作られています。手作業で行われるため一つひとつの商品に個性があります。物によっては使う環境や頻度、人によっても経年変化の仕方は変わってくるため、自分だけの大切な生活道具として大切に育てることができるのです。

現代社会にこそ用の美を

今の忙しい世の中にワンポイントこういう道具があることで心豊かに生きていけるのではないでしょうか?

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